トップページ > 雑誌掲載・連載記事

お金を貸す前に、まず契約書を

アルプス国際行政書士事務所電話番号

旭川アルプス国際行政書士事務所
〒071-0173
北海道旭川市西神楽北1条4丁目
TEL/FAX 0166-75-5750

旭川の法律相談(相続/会社設立/交通事故/借金/離婚/探偵など)お任せ下さい!

 第39回 お金を貸す前に、まず契約書を

 第39回はお金を貸すときに注意したい点について説明する。

 誰しも人生で何度か友人や知人からお金を貸してほしいと頼まれることがあろう。金融機関が貸与する場合は契約書を作成し、必要に応じて担保の提供も受けるのでトラブルも少ないが、問題は個人間で貸し借りをする場合である。古くからの友人だと信用しきってしまい、借用書さえも作成しない場合が多い。ただ、それゆえにトラブルに発展することも少なくない。お金を借りる人は基本的にはできることならお金を返さないですむ方法を考えるものと思っておいたほうがよい。なかには悪意を持って近づき、返すつもりもないのに無心をする者も多い。借用書も担保もなしにお金を貸したのであれば、全額返済される可能性は少ない、お金をあげたのも同然と考えておいたほうがよい。

 一般的に借用書と呼ばれる金銭消費貸借証書は、お金を貸した額、返済方法、返済期限、利息、遅延損害金などが記載された契約書である。貸した金額を記載した契約書がなければ、そもそも貸した証拠さえ残らず、相手方は借りていないという主張さえ可能である。相談者のなかには、裁判をすれば、貸したことが認められると思っている方が少なくないが、裁判官とはいえ証拠もないのに真偽が判断できるほどの超能力があるわけではないし、法律上は貸したと主張する側が立証責任を負うものとされている。したがって、相手方の預金通帳などを開示させることは原則としてできないし、貸した直後に相手方が何かを購入したとしても、その源泉の説明を求めることも難しい。仮にお金を受け取ったことは認めたとしても、もらったものだという主張をされれば、反論はなお難しい。相談者からは、「他人にお金をあげるはずはないですよね」と同意を求められるが、見知らぬ他人のために寄付をすることは珍しくないし、まして友人や知人であれば困ったときに助けてあげることもあるだろう。金銭消費貸借契約書がなければ、貸したかどうかさえ判断ができなくなるのである。

 また、貸した金額は記載されていても、返済方法や期限が記載されていなければ、取り立てることもままならないだろう。相手方は返済は十年後から始める約束だったなどと主張するかもしれない。金額も毎月千円ずつという約束だったなどという主張もし得る。さらには、返せるときに返してくれればよいと言ったなどという主張もあるだろう。現実にいわゆる出世払いを約束するケースも多いが、それでは一生返さなくてもよいという論理にもなりかねない。

 善意で貸した側としては人間不信、法律不信になりかねないが、これらは大人であれば容易に想定できる事態であり、貸した側に責任があると言われてもやむを得ない。

 今後の信頼関係の継続のためにも、契約書を作成しておくことが双方のためでもある。