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相続・遺言書作成・成年後見制度

相続・遺言書作成・成年後見制度の手続き

 1 相続手続きの前に

1-1 亡くなったときにすべきこと

人が亡くなったときには、様々な手続きが必要です。

・死亡届の提出 ・遺産や遺品の整理 ・預貯金の払戻し、名義変更 ・不動産の登 記名義人の変更・生命保険金、入院給付金、損害保険金の請求 ・年金の受給手続き ・自動車の登録変更・運転免許証、各種資格証の返納 ・各種会員・権利の名義変更 ・公共料金の名義、口座の変更など

1-2 優先順位

特にどの手続きから始めなければならないということはありませんが、預貯金や生命保険、年金の手続きは時間がかかりますので、早めに手続きを開始しておいた方がよいでしょう。

銀行や不動産登記で使用した戸籍謄本等の添付書面はたいていの場合還付されますので、還付されない銀行や年金の手続きをいちばん最後にすれば、より少ない負担で手続きをすることができます。ただし、自分の預貯金が少なく生活を年金のみに頼っている場合には、年金を先にした方がいいでしょう。

自分ですべて考えると、手続きをしないで時効により権利が消滅したり、不利な状況で遺産分割したり、かえって余分な費用がかかったりするので、専門家に依頼までしなくても、相談だけでもしたほうがいいです。

2 相続手続き

2-1 相続とは

相続とは、人が死亡することにより、その亡くなった人(「被相続人」といいます。)と一定の親族関係にある人(「法定相続人」といいます。)が被相続人の財産に属する一切の権利義務を承継することをいいます。

相続は、人が死亡したときに開始しますので、相続の手続きをしているかどうかは関係ありません。遺産となる不動産や預貯金の名義変更が完了していない間は、その遺産はとりあえず法定相続人全員の共有のものとみなされますので、法定相続人が数人いる場合には、そのうちの一人の意思表示だけでは手続きをすることはできません。

そのため、金融機関は被相続人の死亡を知ったときに、一部の相続人が他の相続人に無断で現金を引き出すことのないようにその口座を凍結します。

このように、被相続人の戸籍謄本や除籍謄本、法定相続人全員の戸籍謄本や住民票によって真正な法定相続人であることを証明し、実印での押印と印鑑証明書の提出によって全員が合意したことを証明してはじめて登記名義の移転や預貯金の払戻し等を受けることができます。

被相続人が死亡した直後に被相続人のキャッシュカードを使って一部の相続人が銀行から多額の現金を引き出すことがありますが、相続人全員の意向が分からなかったり、相続分が判明していない場合には、後日紛争になることも多く、注意が必要です。

2-2 相続財産とは

遺産にはいろいろなものがありますが、相続の手続きを要する主なものとしては、不動産(土地や建物、借地権など)、預貯金、投資商品(株式、投資信託、国債など)、保険商品(生命保険の一部、損害保険など)のほか、電話加入権やゴルフ会員権などがあります。

現金や有価証券、貴金属、宝飾品、美術品も動産としての遺産となりますが、無記名のものが多く、手続きは不要なことがほとんどです。

借金や各種債務も、負の遺産となります。相続人全員としては、価値のあるものだけ相続の手続きをして、借金は相続しない、という選択はできず、負の遺産を含めてすべてを相続するか、またはすべてを放棄するか、どちらかの選択となります。

相続放棄は家庭裁判所に対して死亡を知ったときから3か月以内にしなければならず、この期間を過ぎると借金もすべて相続することになりますから、プラスの財産とマイナスの財産のどちらが多いか、早めに調べてください。

2-3 法定相続人とは

法定相続人とは、民法上、相続する権利を有する人のことをいいます。法律で定められている以上、法定相続人の範囲を自由に決めることは許されず、法定相続人以外の者が「相続」することはできません。また、法定相続人は全員で手続きをしなければなりません。相続人以外の人が遺産を譲り受けるには、原則としていったん相続人が相続し、その相続人から贈与を受ける形になります。

法定相続人の範囲は、被相続人の配偶者(内縁関係は除きます。)は常に相続人となります。さらに、被相続人に子(養子を含みます。)がいればその子も相続人となります。子がいない場合は、被相続人の両親が相続人となります。子がいたがすでに亡くなっている場合で、その子の子、つまり孫がいる場合には、その孫が相続人となり、その孫も亡くなっていて曾孫がいる場合には曾孫も相続人となります。子や孫などがおらず、父または母もいない場合には、被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合には、その兄弟姉妹の子、つまり甥または姪が相続人となります。

法定相続人であることを金融機関等に証明する際には、戸籍謄本等で証明します。

戸籍謄本等は被相続人の出生時から取得しなければなりません。つまり、通常は被相続人の父親か、祖父、曽祖父の戸籍(昔の戸籍は数代記載されています。)まで遡って現在に至るまでの連続したすべての取得することになり、百何十年も前の戸籍から数十枚に渡って取得しなければならないこともあります。また、法定相続人全員の戸籍を取得するには、いまだ会ったことも名前も知らない相続人の戸籍や住民票も探して取得しなければならないことも少なくありません。

法的に有効な遺言書があれば、これらの戸籍謄本の収集等の手続きは不要となります。家族のためにも、家計のためにも遺言書は残しておいてくださいね。

2-4 法定相続分とは

遺産を相続人間でどのように分けるかは各相続人が自由に判断することができます。

一人の相続人が遺産の全部を相続することもできますし、全員で均等に、または異なる割合で相続することもできます。さらに家庭裁判所に申述することによって、相続を放棄することもできます。ただし放棄は、3か月以内にしなければ、相続したものとみなされます。

価値のある遺産より負債の方が多い場合には、相続を放棄することにより、負債の相続の免除を受けることができます。ただし、先順位の相続人が放棄をすると、次順位の相続人が相続するか、またはさらに放棄をしなければならないことになります。

それぞれの相続人が相続する割合は、相続人全員が協議によって合意することにより決定します。これを遺産分割協議といいます。ただし、負債については、誰が負債を相続するか相続人間で自由に決定することはできず、債権者の承認を得なければなりません。

相続人の中に、未成年者や認知症の方がいる場合には、その相続人には遺産分割協議において合意する意思能力がありませんので、別途家庭裁判所の後見人選任の申立てをする必要があります。

上記の遺産分割協議がまとまらない場合には法定相続分の割合による遺産分割を行うことになります。

法定相続分は、被相続人に配偶者、子、父または母、兄弟姉妹しかいない場合には、その順位の相続人が全部を相続します。子が3人いれば、それぞれ3分の1ずつの割合となります。

そのほかの場合は、下記のとおりです。

法定相続人 法定相続分 配偶者+子 配偶者2分の1   子2分の1 配偶者+父母 配偶者3分の2   父母3分の1 配偶者+兄弟姉妹 配偶者4分の3   兄弟姉妹4分の1 2-5 特別な事情があるとき *寄与分 

共同相続人となる者の中に、被相続人の生前においてその財産の維持や増加について特別の貢献をした者がいるときは、その貢献をした相続人は遺産分割の際に法定相続分により取得する額を超える額の遺産を取得する権利があります。

具体的には、特定の相続人が、病気になった被相続人を自らの費用の支出により看病したり、高齢の被相続人のために家を改築したり、無償で資金を提供したり、代わって借金の返済をしたり、被相続人の事業を無給で手伝ったりした場合が考えられます。

これらは、配偶者または子が被相続人と一緒に住んで介護をしていたなど、夫婦間の協力義務や親族間の扶養義務といった法律上当然とされる義務を尽くすだけでは足りず、被相続人のために特別に資金を提供したり、本来ならば付添人を雇うべきところ相続人が付き添って看病したなど相当の時間を無償で提供したという事実があって認められるものです。

*特別受益

相続人の中に、被相続人から遺贈を受けていたり、一定の生前贈与を受けていた者がいる場合には、相続分の前渡しをされたものと考えて、その者の相続分を減らすこととされています。

生前贈与には、被相続人から結婚の費用や、住宅や自動車の購入費用をもらっていた場合や、他の相続人と比較して特別に高等教育を受けたりや留学をさせてもらっていた場合などが含まれます。

ただし、親である被相続人から、数人の子全員が同じ割合で金銭の提供を受けることはあり得ないことから、特別受益や寄与分の算定は非常に難しいのが現状です。

*認知症や未成年者

相続人の中に、認知症や知的障害等により判断能力が不十分な状態にある者がいる場合には、家庭裁判所で成年後見(法定後見制度)の申立てをすることが必要です。

また、未成年者がいる場合には、家庭裁判所で特別代理人選任の申立てが必要です。親が亡くなった場合に、未成年者である子を代理してもう一方の親が遺産分割をすることはできません。

後見制度は非常に煩雑なので、親が認知症になりそうであればあらかじめ子に贈与しておくのもひとつの方法です。

*行方不明者

ある相続人の行方を知らない場合でも、他の相続人はその相続人の住民票を取得することはできますから、現在の住民票上の住所を知ることはできます。

しかしながら、住民票上の住所に住んでいない場合には、居場所を突き止めることは困難となります。

相続人が7年以上生死不明な場合は、家庭裁判所で失踪宣告をしてもらう方法があります。失踪宣告がなされると、生死不明となった時から7年間の期間満了の時に死亡したものとみなされ、その者の代襲相続人と遺産分割協議をすることになります。

生死不明の状態がまだ7年も続いていないときや、どこかで生きている可能性があるときは、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任の申立てを行います。ただし、多額の報酬が必要となる場合があります。

推定相続人となる者に行方不明の者がいる場合には、生前に遺言書を作成しておくことが必須ですね。国内にいるのか海外にいるのか、何人いるのかも分からない人を探すには、莫大な時間と労力と費用がかかりますよ。

*相続人間で争いがあるとき

遺産分割協議がまとまらない場合には、家庭裁判所に調停の申立てをすることができます。調停でも話し合いができない場合には、訴訟を提起することになります。

法務大臣の認証を受けた紛争解決センターを利用すれば、裁判や調停をするより早期かつ低額で解決できることが多いですよ。北海道では、「北海道民事紛争解決センター」(旭川)がありますので、利用してください。

2-6 相続税とは

被相続人の遺産が相続税の非課税枠を超えるときは、10か月以内に相続税の申告をしなければなりません。

相続税の課税対象となるものには、預貯金や不動産などのほか、保険金、退職金、相続開始前3年以内に取得した贈与財産なども含まれます。

上記の総額から負債を控除して課税価格を求めます。

課税遺産総額は、課税価格の合計額から遺産に係る基礎控除額を差し引くことにより計算します。

課税価格の合計額-5,000万円+1,000万円×法定相続人の数=課税遺産総額

たとえば、法定相続人が3名の場合(相続放棄した者も含みます)には、

5,000万円+1,000万円×3=8,000万円 となり、8,000万円までが相続税非課税となります。

これを超えた場合には相続税の申告が必要ですが、遺産の種類によって、または配偶者の遺産を

相続するなど相続する人によって別途控除額や軽減措置があります。

相続税の申告が必要な人は、全国で4%くらいといわれています。

2-7 相続時精算課税制度とは

相続財産が少ない人の場合には、あらかじめ生前に贈与を行うことによって遺族の負担を減らすことができます。

通常、親が生前に子に財産を贈与すると贈与税がかかりますが、相続時精算課税制度を利用すれば、2500万円までは、生前に贈与をしても課税されません。

相続時精算課税制度は、生前贈与された財産にはその時点では課税せず、相続が開始した段階で相続財産に加算し、相続税で精算させるというものです。それゆえ、多額の相続を行う人には不向きであり、この制度を利用すると、通常の年間110万円までの贈与税基礎控除も使えなくなりますので、十分に考慮することが必要です。

手続き 必要書類 提出先(依頼先) 死亡届 死亡届、死亡診断書、死体火葬許可申請書 市町村役場 葬祭費、埋葬料 申請書、健康保険証、死亡診断書、住民票 市町村・ 健康保険組合 など 銀行の預金・株式 投資信託・国債等 通帳・証書・キャッシュカード、依頼書、委任状、領収書、被相続人の出生時からの連続した戸籍・除籍謄本、相続人全員の戸籍謄本・印鑑証明書 金融機関、 保険会社 (行政書士、 司法書士、 弁護士) 預金・投資信託・国債等(遺言あり) 通帳・証書・キャッシュカード、依頼書、領収書、遺言書、被相続人の戸籍謄本、受遺者の戸籍謄本 郵便局の貯金 通帳・証書・キャッシュカード、支払停止依頼書、依頼書、委任状、被相続人の出生時または15歳くらいからの連続した戸籍・除籍謄本、相続人全員の戸籍謄本・印鑑証明書 生命保険・ 入院給付金 依頼書、保険会社所定の死亡診断書、被相続人の出生時からの連続した戸籍・除籍謄本、相続人全員の戸籍謄本・印鑑証明書(受取人に誰が指定されているかによります) 土地・建物 登記申請書、登記原因証明情報、登記済証・登記識別情報、遺産分割協議書、評価所有証明書、相続関係説明図、被相続人の出生時からの連続した戸籍・除籍謄本・住民票の除票、相続人全員の戸籍謄本・印鑑証明書・住民票 法務局 (司法書士、 行政書士・ 弁護士は 一部の手続き) 自動車・バイク 申請書、自動車検査証、車庫証明書、手数料納付書、自動車税申告書、遺産分割協議書、被相続人の戸籍謄本、相続人の戸籍謄本・印鑑証明書 運輸支局・ 市町村役場 (行政書士) 公的年金 年金手帳、年金証書、被相続人・請求者の戸籍謄本、請求者の住民票、請求者の所得証明書、死亡診断書、健康保険証 年金機構 (社会保険 労務士) 相続税の申告 申告書、相続人全員の戸籍謄本・印鑑証明書、遺産分割協議書、評価所有証明書・名寄台帳、預貯金の通帳、領収書など 税務署 (税理士) いずれも個々のケースによって必要な書類は大きく異なりますから、必ず行政機関や専門家に確認してね。    それぞれの専門家に別々に依頼するよりも、どれかひとりに依頼すれば、提携している専門家がやってくれますよ。